歌人 北久保まりこ
本阿弥書店 歌壇
本阿弥書店 歌壇
これまで発表してきた、短歌・鑑賞文などを発表します。
晩年はいつからならむ廃村に親猫が子を産んでゐるなり |
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夢などを語りし日あり 今はもう亡いかもしれぬベテルギウスよ |
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今よりも赤かつたらうか太陽はマヤの人らの崇めゐしころ |
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火の中に笑ふ顔見き悪神か亡母か己かさだかならねど |
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包みこむ阿古屋のこころ瑟瑟と哀しみの層玉となるまで |
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山祇(やまつみ)に見守られをり 柔らかき地に眠りゐし骨を洗ふ手 |
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バリバリと時間の層を剥がしゆき何もなくなる解体現場 |
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もう五年経つんですね柚子切りの蕎麦を啜れる亡母(はは)と居た席 |
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酒になる前の葡萄のひと粒が幼い眼をして助けてと言ふ |
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水溜りから雲が出てゆくやうにしてあの朝父は居なくなりたり |
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