いりの舎 うた新聞 これまで雑誌に発表してきた発表作品・鑑賞文を紹介します 現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tanka Society of America
Tan-Ku共同創始者
Tan-Ku Association President

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌
Spoken World Live発表作品

北久保まりこ

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歌人  北久保まりこ
いりの舎  うた新聞

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これまで発表してきた、短歌・鑑賞文などを発表します。

『うた新聞』2024年6月号に「読者自薦一首」にご掲載頂きました。

ありがとうございました。

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読者自選一首

北久保まりこ

猫として生まれしポレが丸くなる 種のへだたりの曖昧な午後

いりの舎『うた新聞』3月号、エッセイ「短歌トラベラー!」のご依頼を賜り、本日、掲載紙が届いてまいりました。

この度このご企画に参加させていただき、旅についてじっくり振り返るとても良い機会を頂けたことに、感謝しております。

どうもありがとうございました。
今後共、どうぞよろしくお願いいたします。

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コロナ後の北欧

北久保まりこ

 世界を旅し、和英朗読で短歌を紹介する活動は、突然のコロナ禍により中断を余儀無くされた。十五年目に入り好調の波に乗っていた時期である。生涯を懸けて、貫こうと決めていた仕事だった。しかし、再開の目処は立たず、ただこの地上に生き延びることだけを願って過ごした月日だった。今思うと、遥か昔の出来事のようである。当時は、過去に訪れた五大陸、五十三都市で世話になった文学者達を案じ、無事を祈らぬ日は無かった。

 希望がもたらされたのは、スウェ―デンの詩人A・マリス氏から文芸祭に招かれた、二〇二二年の夏である。彼女とは以前英国の文学会議で会い、意気投合した仲だった。

 これまで通り、BGM用のパーカッション七つと着物を携え、単身、国境を越えた。露宇情勢下、北極圏航路だった。

 湿度が低く、爽やかな七月のストックホルム。雲を幾つか遊ばせた空は広く、小さな島々を抱くバルト海の群青が、歴史ある王国の品位を感じさせた。旅人らしく迷いながら歩いた、十七世紀のままの旧市街が忘れ難い。

 中央駅で、ルーマニアからの参加者と落ち合い、一路開催地のトラノスへ。沿線の白樺の森が、南下する車窓を彩っていた。

 滞在中一回の公演予定だったが、後日、欧州諸国から到着する聴衆の要望を汲み、再演が決まった。会場は、百人以上入るライヴハウス。久々の企画にかける主催者の意気込みが窺われた。こちらのパフォーマンスにも熱が入り、魂から魂へ、直に思いを伝える媒体となって演じた。ステージを終えると、客席のあちらこちらに涙を拭う姿が見られ、胸が熱くなった。そこには、未知のウイルスの脅威を潜り抜けた人々の、瑞々しく温かな、命のさざめきが満ちていた。

・宇宙から見えぬ地球の国ざかひ 神の視点はいづこにありや

 去り際、橅の梢超しに仰いだ空は、子供の頃のように高かった。

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『うた新聞』7月号 第136号 読者自選一首のページに掲載されました。

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地表より解き放たるる心地良さ
生まれる前のいのちに戻る

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いりの舎うた新聞の二月号に、新作五首のご依頼を賜りまして、ありがとうございました。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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不帰ノ嶮 (かへらずのけん)

風を抱くパラグライダーの陽の密度 人でありしを忘る暫く

上昇気流わづかに捉へ昇りけり雪晴れの気の渓まで透る

ダイヤモンドダストと大気に浮かびゐつ 山祗様にまみえるところ

大天狗下る羽音が空を裂く白馬三山不帰ノ嶮(かへらずのけん)

地表より解き放たるる心地よさ 生まれる前のいのちに戻る

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いりの舎様、霜月作品集に新作五首をご依頼くださいまして、ありがとうございました。

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 かくし神

立夏より立秋愛(かな)し 病弱な母が私を産みたりし秋

勾玉はいのちのかたち縄文の翡翠にやどる姫川の祇

隠し神雲に触れしか 大いなる指紋をのこす秋空の青

アキアカネ肩に休ませ石仏が観音原に頬杖をつく

かくし神あらば守りの神あらむ 山路をてらす良寛の月

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『うた新聞』7月号 第112号 読者自選一首のページに掲載されました。

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祭礼の土器出でたりし校庭にゆるりとのぼる縄文の月

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いりの舎様、長月作品集に新作五首をご依頼くださいまして、ありがとうございました。

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Time 

 

解決をするのではない置き去りにする 時といふ容なきもの

生と死のさかひやいづこ サガリバナ数多身捨てし後の川べり 

原爆は不要なりきと明かすまで七十余年を要せし理由

社会科の師の明るさとNuclear 宙吊りのままに経し半世紀 

凪いでゆく盆の浅瀬を亡母が来ぬオフホワイトの麻のパラソル

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『うた新聞』5月号 第98号 読者自選一首のページに 下記の歌をご掲載下さいました。

紀元前よりここに在る石畳
鵲が何か啄んでゐる

 

いりの舎 『うた新聞』四月号 に 新作五首が掲載になりました。

昇りゆく天とはいづこ乳の実のひとつも椀に探せぬゆふべ

降りやまぬ星の夜にさす傘が欲し キーン先生旅立ちたまふ

九十七の誕生祝ひのはずなりしシャトー・ムルソー お好きでしたね

樽かをるブランデーに放たれて干し無花果に時間がもどる

旧漢字まじる直筆 亡きあとも灯りつづける師のあたたかさ

物心つくかつかぬか あんさつの報道の声意識の底に

モノクロの記憶に故き洋館の匂ひまじりぬ宇宙中継

不穏なる空気淀みしあの日より速まりたるや 滅びの時計

 

衝撃が家中を駆け抜けた。たった四歳一か月だった私が、それを鮮明に記憶していたのはなぜだろう。東京、目黒の祐天寺にあった父方の実家で、そのニュースを観た。

私は陰鬱な暗さと厳めしさから、玄関脇のその応接間が嫌いだった。アナウンサーの硬い声に、大人達が一斉に息をのみ、私は幼心に、何か不吉な出来事が勃発したと悟ったのだった。

私の中であの場所は、今も湿った匂いを放ち、時代の節目をかかえたまま蹲っている。

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