短歌研究 これまで雑誌に発表してきた発表作品・鑑賞文を紹介します 現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tanka Online Project
Tanka Society of America

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌
Spoken World Live発表作品

北久保まりこ

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歌人  北久保まりこ
短歌研究

短歌研究
これまで発表してきた、短歌・鑑賞文などを発表します。

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文明の時間はるけしエジプトの栄華がかをるカイロの南
生と死を分けたるは誰 祝宴にすり替へられし王の杯
パピルスに記されざりし真実の背景として空をゆく船
王族に今もかしづく魂の気配あるらし棺のめぐり
十六の長女に王位継がれけり 蒼天を灼(や)く夏至の白日
ターコイズ、ラピスラズリを鏤めし冠戴く華奢な首筋
消えたりし乳母(めのと)のひとり肩口に女王と同じ痣を隠しつ
虚も実も懐く寂寞 すべらかに地中海へと大河は至る
運命神(レネネト)よ、一体いつから其処にゐる時の栄枯を見守りながら
五千年むかしの夏の星の声 大いなる墓にそそぐ厳か

 
   
わが手もて上よりつつむ幼きの蛍をつつむ両のてのひら 佐佐木幸綱『金色の獅子』
右の手と左の手かさねあはすれば女男〈めを〉のごとくに息づきあへり 伊藤一彦『微笑の空』
握り開きみづからの手にうつとりと見入るわが子に近寄りがたし 大口玲子『トリサンナイタ』

 一首目、骨太な男歌の魅力で知られる作者であるが、この歌には弱き者への慈愛が満ちている。蛍を手にした喜びと小さな命の尊さを実感している子の、生そのものを包み込むあたたかい存在がそこにある。共に浮かぶのは『百年の船』冒頭の「てのひらのはるよわよわし 拾い来し雛の目白がふるえつづけて」である。

 二首目、左右の手が互いに息づきあうととらえた視点にひかれる。もとより生き物は左右不対象であり、自分の一部であっても時に儘ならないものでもある。別々の性をもっているようだとしながらも、「男女」で はなく「女男」とし、俗的に流れず寧ろ宗教的とも思える奥深さを感じさせる点に注目したい。

 三首目、わが子が幼かった頃、同じような気持ちを抱いた記憶が蘇る。育児に追われる日常の中、光る瞬間を捉えて巧みである。生を受けて間もない、まだ世の塵に汚されぬ存在への畏怖の念が、作者のキリスト教的な背景とも相俟て、清らかに詠われている。

 

<新作>

賜りしイースターエッグつつみをり磔刑のあとを知らぬてのひら

大き手のぬくみ懐かし とろとろと茶碗のうちにさがす乳の実

ひとしづくの雨に潤める運命を信じてもみむ 春のてのひら

 

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