歌人 北久保まりこ
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東京READING PRESS 2006年 8-9月号
東京READING PRESS 2006年 8-9月号 に、6月10日の朗読イベント『On This Same Star 20060601』が紹介されました。
2006/6/10 sat.
On This Same Star 20060610
出演 : 北久保まりこ、アメリア・フィールデン、竹浪明、柳下美恵
会場 : 西荻窪・奇聞屋
先日行われた現代短歌・俳句の朗読会「On This Same Star(この同じ星の上で)」は、タイトルにふさわしく世界のあらゆる出来事や心模様が作品に織り込まれていた。表題作の作者でもある北久保まりこさんは、99年に第一歌集を発表して以来国内で活動を続けてきたが、昨年からはオーストラリアやカナダで朗読会を開くなど、自らの作品と日本文化としての短歌を海外に紹介している。この日は、オーストラリア在住の女流歌人、と同時に北久保さんの作品を英訳しているアメリア・フィールデンさんも出演した。
短歌と聞くと「敷居が高くて難しい」という印象を抱きがちだが、北久保さんの作品は短歌に触れる機会のない人でも楽しめる言葉が使われていた。伝えたいという気持ちは、朗読にも表れていた。ピアニスト・柳下美恵さんの静かな即興演奏に乗せて、人間や自然のけなげな日常生活から、チェルノブイリ原発事故やイラク戦争の恐怖、さらには北久保さん自身の心にひそむ明暗が変化をつけた声で読まれ、となりに立ったアメリアさんが一首ずつ英語に訳していった(巧みな韻律と短歌の形式が守られていることは驚きだ)。
文筆家でもある竹浪明さんの短歌・俳句は、言葉の意外な組み合わせによるユーモアと思いやりのある皮肉が含まれていて人柄を感じさせた。
朗読もトークも北久保さんのキャラクターが作り出す柔和な空気に包まれていたが、誰もが目をそむけたくような厳しい現実までも短歌に反映させて朗読している辺り、この星に強く根を張った北久保さんの揺ぎない意思を見る思いがした。
【丹野直樹】