記事詳細 国内、国外で短歌の表現活動を続けています。現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tan-Ku共同創始者 Tanka Society of America
Tan-Ku共同創始者
Tan-Ku Association President

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌
Spoken World Live発表作品

北久保まりこ

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歌人  北久保まりこ
記事詳細

短歌現代(短歌新聞社)2006年3月号 特集・斉藤茂吉を受け継ぐために

「40代歌人による40代の茂吉 一首鑑賞」

友とともに飯に生卵をかけて食ひそののち清き川原に黙す
(『遍歴』より)

茂吉がドイツに留学して二年目の作品である。この背景には、父の他界と関東大震災という、突然の相次ぐ悲報があった。

「飯に生卵かけて食う」という独特の食文化が、単なる郷愁以上の、深い切なさを感じさせる。そして結句の「黙す」から、やり場の無い重苦しさと、語り合ってもどうにもならぬ、という諦念が伝わってくる。

この歌が詠まれた大正十二年、母国とドイツとを隔てていた感覚的な距離は、今とは比較にならぬほど遠かったであろう。

そして懐かしい味覚は、幼い頃に慣れ親しんだ風景や、面差しをも思いおこさせる。

後には、ただ祈ることしかできなかった茂吉の無力感が、粉雪のように降るばかりであった。