記事詳細 国内、国外で短歌の表現活動を続けています。現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tan-Ku共同創始者 Tanka Society of America
Tan-Ku共同創始者
Tan-Ku Association President

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌
Spoken World Live発表作品

北久保まりこ

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歌人  北久保まりこ
記事詳細

ながらみ書房『短歌往来』2003年3月号 砂丘の時間

巨いなる砂の時計に迷ふごとときをり砂の数多降り来ぬ
流星の余韻しいんと冷えわたりわれも時間もみえなくなりぬ
たたなはる時の風紋のてりかげりうしなはれゆく記憶の蛇行
砂山に足をとられてはためける布の一部になりたり我は
風紋にひかりのうねり もう二度と思ひ出されぬだれかの名前
まつすぐな欅並木のその果てにベージュにけむる死・・・のやうなもの
現身とへだてなく死を思ふとき土埃して過去おしよせぬ
「おほむかしあなたは海だつたのでせう」細胞のなかにさわぐ水たち
砂嵐ひとつでわれの虹までも奪はれることいとも容易し
アンダンテ・カンタービレを聴きながら羽化してみたし雨あがる夜
ちぢみたる羽をのばしてゆく時間はばたく時間 弦楽のやう
とまらないかなしみの水 わたくしを保つさいごの弁かもしれず
癒えぬままむかへる春に微かなれどなにかうつろひゆくを予感す