記事詳細 国内、国外で短歌の表現活動を続けています。現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tan-Ku共同創始者 Tanka Society of America
Tan-Ku共同創始者
Tan-Ku Association President

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌
Spoken World Live発表作品

北久保まりこ

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歌人  北久保まりこ
記事詳細

ながらみ書房『短歌往来』2004年8月号 ひだる神

をはらない夏のけだるさ夜の水は拭はぬままに光らせておく
密にして茂るままの木したにてわれに宿るや夏の夜のみづ
茉莉花(まつりくわ)のかをりたちくる夜の坂ひとりの時は神もつやめく
まとひつく昨夜(よべ)の風ありまだわれは決めかねてをりみづの行方を
分け入るをアヅマネ笹は拒めるに野の双眼のわれに戻り来
想ひとげず逝きたる人のこゑかとも指のかたちに咲くグロリオサ
眼うらに光のこしてもう見えぬ谷の魚よ 恋のようなり
スコールを受くべし両の胸うちにアジアの土よアジアの幹よ
すれ違ひし黒衣の妊婦ひだる神なりしかやはく海のかをりす
わがうちの谷川に落つる滝ひとつのこしてゆきし君といふ人
ゆうらりと光を胎む水中の亡き母に問ひたき鈍色の闇
あの世とはどの世なるらむこの世との境のふいに曖昧となる
短命と言はれゐしわが手のひらに野薊の棘の刺さる快感