記事詳細 国内、国外で短歌の表現活動を続けています。現代短歌 歌人 北久保まりこ

北久保まりこ プロフィール

北久保まりこ

東京都生まれ
東京都三鷹市在住
日本文藝家協会会員
日本PENクラブ会員
現代歌人協会会員
日本歌人クラブ会員
心の花会員
Tan-Ku共同創始者 Tanka Society of America
Tan-Ku共同創始者
Tan-Ku Association President

和英短歌朗読15周年記念動画
新作英文短歌
Spoken World Live発表作品

北久保まりこ

当サイトはリンクフリーです。
左のバナーをご利用下さい。

歌人  北久保まりこ
記事詳細

ながらみ書房『短歌往来』2006年6月号 水よーよー

水溜りから雲が出てゆくやうにしてあの朝父は居なくなりたり
そんなこと取るに足らぬとボサノバが耳たぶのへりをすべりてゆきぬ
たかだかと掲げられゐし肩車だれなりしやあのおほきなる手は
すもも酒 夜ごと夜ごとに赤くなれ母体にまろくわらべは肥ゆ
生まれ出でたしと思はずただ生まれ出でたるままに魚の泳ぐ
ねぇといふ声の届いてゐた頃を思ひ出させるこんな晴れの日
水風船ひとつふたつとつきたる日父も母もゐきひかりのなかに
照り陰るひとの心のいく襞をこゆればたどり着けるだらうか
たわい無きやりとりののち癒えゆきて駆けてかへらむからつぽの空
久びさにささくれ痛し天上のわが父母は笑みたまふらし
戯言のごときくりごと自らの死にも気付かず揺り椅子ゆらす
父を歌ふことを休まむ今日ひと夜父をもつ子のふりして眠る
百年後のわたしを掬ひあげてゐる両手に一杯の熱もてる砂